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この話は「きのうのできごと。」 (1)、(2)、(3)続きです。 読んでない方は↓こちらをどうぞ。 ☆「きのうのできごと。(1)」 ☆「きのうのできごと。(2)」 ☆「きのうのできごと。(3)」 乗務員が去った後、再び、なんとなく気まずい空気が流れた。 (あぁ~・・・・。ん~・・・・。あぁ~・・・・。どうする。どうする!???) 〔手をお貸ししましょうか?〕っと、その一言をなかなか言葉にして出す勇気が出てこない。 そんな自分にも苛立つ。 老婆は1両目の方をじっと見つめながらも、動く気配をみせない。 (トイレ行きたいよね~。だよねぇ~。) 私も前方対角線を見る。 2両目の前方の席。 そこには、予備校生のいとこの男の子が参考書を広げ座っていた。 実は乗車した時点で気が付いていた。 もし、私が老婆の手を引き彼の前を歩いたら彼はどう思うだろう、だなんてこの場においても人の目を気にする自分に嫌気がさす。 再び、視線を彼女に戻し、その後生茶を見つめた。 『あのっ!!・・・・』 私は手に持っていた生茶を鞄の上に置き、席をすくっと立ち上がり、彼女に声をかけた。 やっぱり黙ってみていられなかった。 見ていられなかった。 『手をお貸ししましょうか?』 さっきまで、頭の中でぐるぐる繰り返していた台詞を言う。 「あら・・・、いいんですか??」 彼女はなぜか少々の戸惑いを見せた。 『はい。』 笑顔で手を差し出す。 「すいませんねぇ・・・。」 彼女はゆっくり私の手に、自分の手を伸ばした。 私は彼女の立ち上がるタイミングを待つ。 お互いに1両目と続くドアを見つめる。 私はついでにいとこを見る。 そのとき、つないだ手から〔ぎゅぅっ〕という力のかかった感覚が伝わってきた。 視線を老婆に戻すと、彼女はまだドアを見つめていた。 やはり電車の揺れが怖いようだった。 『どこから来たんですか??』 「四ツ倉の方から来たんですよ。」 〔四ツ倉〕とは福島県である。ちなみここは茨城県。 長いあいだ電車に揺られてきたようである。 『何両目から来たんですか??』 「あぁ~・・たぶん、4両目かなぁ。」 私は彼女がトイレに行ったあとのことを考えていた。 (用をたしたら、また1人で戻れるのか??) 電車は次の駅にだんだんと近づきスピードが落ちてきた。 彼女はついに立ち上がった。 私の手を強くにぎっている。 私たちはゆっくり歩き出した。 周りの視線が気になる。 でも、それより気になるのは、老婆の足元だ。 彼女のスピードに合わせてゆっくり歩く。 一瞬、後方を見る。 自分の荷物が置きっぱなしだ。 (ここ田舎だし・・・大丈夫だべ。) と、思いつつ少々心配だが、彼女のスピードに合わせるほかはない。 1両目へと続くドアを開けた。 1両目の見回りを終えた乗務員とすれ違う。 彼はなんとなく気まずそうな顔をしていた。 私が先に、1両目へと渡る。 ドアとドアの間の空間。 ジャバラに包まれた空間 鉄板と鉄板とあわせただけの不安定な足元。 子供のころ、あそこを渡ることがとても怖かった。 年老いた老婆も、きっとそうに違いない。 いったん足を止めた。 ドアを支えながら、ヨロヨロした足取りで慎重に渡り始めた彼女の様子を伺う。 そして、左側にはトイレ。 無事渡り終え、彼女は今度こそトイレを確認すると、安心した顔を見せた。 「ありがとうございました。」 彼女はそう言って、トイレの扉をあけ入っていった。 1両目は、2両目より少なく5,6人の客しか居なかった。 電車は、次の駅に着き、停車中。 トイレの目の前の席は空いていた。 私はそれを確認すると、荷物が心配になり、自分の席へと急いで戻った。 つづく
by inoko_k
| 2004-11-03 11:20
| きのうのできごと。
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